○風水と護符について
「漢文帝精研堪輿学」という風水の研究書に紹介されている話。
漢の帝相が農村を巡幸したときのエピソードです。
「前高後低、北方有水、東南高西北平」といえば風水が悪い典型のような家。「三愚之宅」と云われるくらいどうしようもない劣悪風水の家で、「人が住むのは不可なり」とまで云われる家です。
この農家は当然のように貧困にあえいでいて、家人には怪我や病気が続き、家畜を飼ってもすぐに死んでしまい、穀物もさっぱり収穫できず、おまけに訴訟事に巻き込まれたりで、悲惨な生活をしていました。
ところがある日を境にその家は農村でも一番の富豪になって、使用人も50人を超えるほどになったというのです。
漢の帝相はその話にひどく驚いて、どういうわけでそうなったのかをその家の主人に尋ねました。
その主人が曰く
もう30年も前の話です。この家に住んだ頃はそりゃ酷い生活でした。生活に困り、子供も病気で死んでしまい、妻と一緒に死のうかという話もしていた頃でした。
ある冬の夜に旅の書生さんが訪ねてきたんです。
「旅の途中で日が暮れてしまいました。夜中に山越えすると狼に食われてしまいます。どうか一晩、宿と食事を恵んでくれませんか」
その頃は自分たちの食うものにも困る生活でしたが、旅の書生さんが困っているのだからと、冬を越すためのわずかな蓄えも出してその書生さんを誠心誠意歓待してあげました。
翌朝、その書生さんは旅立つ支度をしてから私に言いました。
「あなたのお宅はとても生活に困っているように思います。そんな中でわたしのような者を歓待していただいて大変ありがとうございました。
ここに鎮宅の霊符があるので一宿一飯のお礼にこれをあなたに授けましょう。
この霊符を家に貼れば十年後には富豪になれます。二十年後には使用人を多く雇うようになります。そして三十年後には帝相も驚いてあなたの家を訪ねてくるでしょう」
その書生さんから霊符を受け取ったとたん、白い煙とともに書生さんの姿が消えてしまいました。きっと高名な仙人が書生の姿で我が家に来てくれたんだと思います。その霊符のおかげで今の私の暮らしがあるのです。
この話を聞いた帝相は符の持つ霊力にとても感心した。
そのあとは霊符を使えばあらゆる災難から身を守れると延々と書かれているわけです。
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